また、この年の6月16日には、毎日放送が所有していた大阪・城見のOBPにあるシアターBRABAへ、「落語家生活三十周年 桂雀々十八番」を見に行きました。雀々さんとはMBSラジオの控室で何度かお会いして、顔見知りではあったのですが、それまで落語会には殆ど行ったこともなかったのに、この時には、なぜか行ってみようかと思ったのです。その理由の一つは「俺が雀々を大看板にしてやる!」と買って出たやしきたかじんさんが、ミュージカルを中心に演劇公演を行う1136席の大きなスペースで、果たしてどんな落語会をプロデュースされるのかということ、もう一つは、日替わりのゲストの中に、若村麻由美さんの名前があったことです。以前から、CS放送の「御家人斬九郎」などに出演されて、辰巳芸者の蔦吉を演じられているのを見る度、なんて和服姿の美しい人なんだろうと思っていたのです。どちらかと言えば、雀々さんの落語を聴くというより、若村さんを観たくて行ったようなものです。何せ2002年の手帳の裏には、土佐鶴のCMに出られた若村さんの芸者姿の写真を貼っていたのですから。
満員の場内に入り、2階の最前列で、「こんちはコンちゃんお昼ですよ!」でお世話になっていたMBSの青木愛アナウンサーと、一緒に行った澤君に挟まれながら舞台を観たのですが、残念なことに舞台との距離があって若村さんの顔がよく見えないまま時が過ぎ、次第に「がまの油」、「仔猫」、「疝気の虫」の3席を演じた雀々さんの芸に引き込まれていくようになりました。
次に雀々さんにお会いしたのは、たしか、2012年の2月26日のことだったと思います。場所は下北沢にある「アトリエ乾電池」という小さなスペースで、たしか「桂雀々 落語の広場」というイベントだったと思います。場所が分からず、結局タクシーでそこへ向かったのですが、早く着き過ぎて、ふとアトリエを覗くと、柄本明さんが自らモギリをやっておられていたので驚きました。雀々さんは、前年の11月に「大阪でやれることは総てやった、51歳でリセットして東京で勝負したい!」として上京をされたばかりの頃でした。雀々さんと柄本さんとの関係は、シネマフィルムの作品「天使突破6丁目」という作品で共演されたくらいしか分かりませんが、イベントの冒頭に柄本さんから雀々さんの紹介があって、およそ100人程の客を前に、雀々さんが「代書屋」と、創作の「いたりきたり」を演じられて、久々に健在ぶりを拝見することができました。帰り際にふと、前の席を見ると、北野誠さんが居られるのに気が付いて、ご挨拶させていただきました。この人も、この頃にはいろいろあって大変な時期だったのです。
そして、2015月号8月10日には「5ℓ」(2015年10・11月号)で、雀々さんにインタビューをさせていただきました。場所は赤坂にある「重箱」でしたね。暑い中、鰻は如何なものかという思いはあったのですが、どうしても和風な場所でお会いしたかったのです。当時、「夢は2020年に、日本武道館での還暦独演会をやりたいことです」とおっしゃっていたように記憶していますが、翌2016年4月3日、桜の花が咲き誇った桜坂の先にある渋谷伝承ホールで開かれた「渋谷に福来るSPECIAL」を見に行って「代書屋」を聴き、トリを務めた自称「上手い系の」立川志らくさんより圧倒的に面白いことを確認しました。
雀々さんはこの後、2017年にはTBSの高視聴率ドラマ「陸王」に出演、2018年2月18日には明治座で独演会、さらに6月22日には、芸能生活40周年記念公演を東京フォーラムで開いて「鷺とり」、「くっしゃみ講釈」などのネタを披露しました。そして今年(2019年)は、2月11日に大阪新歌舞伎座で独演会、次いで、3月21日の浅草公会堂公演を皮切りに、いよいよ全国ツアーをスタートされると聞いています。夢の実現まであと一歩、更にスケールアップした雀々さんを見ることが出来そうです。「必死のパッチ」で頑張って来た甲斐がありましたね、雀々さん。
シアターBRABA
若村麻由美さん
若村さんの写真を貼っていた手帳、ちなみに左は愛犬モモ千代
青木愛さん
アトリエ乾電池
5ℓ対談時のツーショット写真
渋谷の桜坂