何はともあれ、月川社長にお目にかからねばと、橘田君とオフィスを訪ねたのは2002年1月の28日のことでした。縷々こちらの状況をご説明させていただいた上で、ご検討を頂けるようお願いをして帰阪しました、林社長に報告をして、2月28日、前年3月にオープンをした大阪のユニバーサルシティウォークの青龍門を、林社長、橘田君と一緒に見に行くことになりました。
店の表にはネオンに龍が浮かんで、まるで隣接しているハードロックカフェのギターを抱えているように見えました。混み合う入り口を進み、青龍門行きのボタンを押すとようやく店内に入れ、テーブルに着けるのですが、時間になると、陽気な音楽と共に、店の一角から乗り物が登場して、中を見るとスタッフが必死で漕いでいる様子が見られました。
驚いたのはトイレです。男子用は精一杯口を開けたオジサンに向かって用を足すのですが、なんとその途端にオジサンがガラガラとウガイをして、顔を上下させるのです。そのうち女子トイレからギャーっと叫ぶ声が聞こえて、「何が起こったのか」とスタッフに尋ねると、慌てた様子もなく平然としているのが気になって、後で見せてもらうと、隣の部屋に、人生訓を読みながら、一人で説教をたれているオヤジがすでに入っていて、無視することもできるのですが、壁がないため、このオヤジと向き合ったまま用をたすことになるのです。さらに、突然、このオヤジがズボンを下げたまま目の前ににじり寄ってくるのです。ここで、女子トイレから「ギャー!」という悲鳴が上がるという仕掛けになっていたのです。
この内装は、83年にサントリーオールドのCM、「ウサギのママとアルマジロのバーテンダーのいるバー」のCMでパペットアニメーションを使ったビジュアルが話題となり、CM以外にも大型レストランの空間演出を手掛けられていた李泰栄さんによるものでした。おまけに料理も結構おいしかったことがあって、3月18日には、88年からソーホーズが経営する松久信幸の名前を冠した南青山のレストラン、「NOBU東京」で打ち合わせをしました。
松久信幸さんは、87年にビバリーヒルズに、レストラン「MATSUHISA」を開いた際に、ハリウッドスターたちから支持を得て、有名なレストランガイド「ザガット・サーベイ」の、レストラン人気投票で常に1位を獲得、店の常連客だった俳優のロバート・デ・ニーロさんからの誘いもあって、93年にニューヨークのトライベッカに「NOBU New York City」を共同経営、さらに2000年には、ジョルジオ・アルマーニさんとイタリアのミラノで「NOBU Milan」の共同経営を始め、和を基本にした独自の創作料理「NOBUスタイル」で世界に知られた著名なシェフでした。なぜかチャーリー小林さんと親しくされていて、私より妻の方がよく存じ上げていることもあって、その縁で私もニューヨークや、ラスベガス、ケープタウンの店に伺ったことがあります。そうそう、ニューヨークの店を訪ねた折には、少し離れた席で共同経営者のロバート・デ・ニーロさんが、ポツンと一人で食事をされているのに遭遇したこともありましたね。スタッフに聞くと、道向かいのマンションに住んで居られるとかで、誰もがさりげなく接していたのを憶えています。
話がそれました。次いで4月17日には、東京本社で行われた、林社長と横澤専務、平戸常務を交えた常務会の席に李泰栄さんを招いて、「青龍門プラン」のプレゼンテーションをしていただき、皆の了解を取り付けることが出来ました。それを踏まえて、MYCAL小樽を手掛けた経験のある比企君にも加わってもらって、橘田君や水谷君とミーティングをしたのを憶えています。
月川蘇峰さん
表から見たネオン
入り口
店に入るボタン
店のテーブル
変な乗りもの
男子用便器
女子トイレにいるオジさん
サントリーオールドのCM「ウサギのママと、アルマジロのバーテンダーのいるバー」
「ザガット・サーベイ」
松久信幸さんと俳優のロバート・デ・ニーロさん