木村政雄の私的ヒストリー

HISTORY

第話

 1月8~9日と、2月28~29日に香港へ行っているのは、香港のテレビ局、「亜州電視」(ATV)とテレビ番組の共同制作をするためでした。93年の12月9~10日にかけて、香港のシャングリラホテルでATVの李潔玲、陳慶嘉氏らと会って共同制作の概略を打ち合わせました。ATVは57年に香港初のテレビ局、「麗的映声」として開局した後、「麗的電視」と改め、82年に資本がイギリスから香港に移動したのを機に、「亜州電視」と改称されていました。89年には親会社が変わったものの、新しくCIを導入して、当時はライバル局を凌ぐほどの好調さを誇っていました。

 企画の実現に当たっては、ご尽力をいただいた香港電通の桐山局長や、ソニーレコード・香港オフィスの森さん、香港の映画会社と提携してビジネスをされていた、オフィス100%の尾中さんらのアドバイスもあって、ABCで76年から80年にかけてヒットした「ラブアタック」をベースにするのがいいのではないかという事になりました。桐山さんから、広い中国をアメリカに例えて、「香港がマンハッタン、上海が全盛期のシカゴ、北京がサンフランシスコで、広州が荒廃したロスアンジェルス」と伺ったことが印象に残っています。

 「ラブアタック」という番組は、男性(主に大学生たち)が、女性(かぐや姫)のハートを射止めるために様々なゲームで攻防を展開して、勝ち抜いた男性だけが、かぐや姫への「愛の告白権」を獲得できるというもので、スタート時は関西ローカルで火曜の深夜に放送されていたのですが、77年4月にNETがテレビ朝日に社名変更されたのを機に全国ネットになり、日曜日10時30分から11時25分に放送されていました。司会は当初からの、横山ノックさんと、元ゴールデンハーフのエバさんに加えて、上岡龍太郎さんが加わりました。(78年4月からは、エバさんに代えて和田アキ子さんが出演)。ディレクターは松本修さんで、84年10月にこの番組が終了したあと、88年にプロデューサーとして、今も続く人気長寿番組「探偵ナイトスクープ」を立ち上げ、91年に民放連テレビ娯楽部門最優秀賞に輝きました。

 私は、ABC側の了解を得るなどはしたのですが、実務の方は大崎洋君と中井秀範君が担ってくれました。おかげで、ABC・ATV・吉本3社の共同制作「香港ラブアタック・香港大追愛!」として結実したのです。憧れのかぐや姫をモノにするために、日本と香港双方から5人の男性が体を張って挑戦するという内容で、吉本からは和泉修さんや島田珠代さんらが出演し、かぐや姫には、日本側からはOPDの中野公美子さん、香港側からはミス・アジアパシフィック代表の女性が選ばれました。ゆくゆくはレギュラーを目指す意図で始めたのですが、ATVの内部事情もありこの回だけで終わってしまったのが残念です。ともあれ、SPDといい、ATVといい、やがて大きなマーケットになるであろう中国への、ファースト・トライになった出来事であったことは確かです。いやーっ、それにしても香港で食べた北京ダックの美味しかったこと!以降、私が週末を利用してしばしば香港を訪ねるようになったのも、この時に食べた北京ダックの味が恋しかったのかもしれません。「かぐや姫」を探すためなどではありません。

香港の「亜州電視」(ATV)

 

 

ラブアタック!

 

 

松本修さん

 

 

松本さんの著書

 

 

中井秀範君

 

 

北京ダック

 

 

日本 VS 香港

「94年度 フィーリングカップル 5 vs 5」(香港にて収録)