木村政雄の私的ヒストリー

HISTORY

第話

 大崎君からの紹介を受けて「ポップティーン」の編集者・尾崎さんとお会いしたのは、この年(93年)の4月末だったと思います。「週刊宝石」や「女性自身」「フォーカス」や「フライデー」など、アダルト向けの雑誌の方はお付き合いがあっても、少女向けのファッション誌の方がなぜ?とは思ったのですが、「角川書店からポップティーンの編集を請け負っている飛鳥新社の土井社長が夕刊紙の発行を企画していて、吉本にも参画をしてほしい」というのです。

 飛鳥新社は、小学館で「GORO」の編集をしていた土井尚道さんが、1978年に設立した会社で、80年から「ポップティーン」の編集業務を委託され、83~85年に「ビートたけしのみんなゴミだった」「たけし吼える」「あの人」を出版、それぞれが20万部を記録。92年には「磯野家の謎 サザエさんに隠された69の謎」が200万部の超ベストセラーになったので、その資金をもとに念願だった夕刊紙を年末から出すべく準備中だというのです。もちろん、こんなことを即断できるわけはなく、土井社長とお目にかかって詳細を伺ったうえで、社に諮るということでこの日は別れました。

 6月10日、お目にかかった土井さんから、ターゲットは既存の「日刊ゲンダイ」「夕刊フジ」「東京スポーツ」などが取りこぼしている20~30代のヤングサラリーマン。高い感性を持つこの年代に響くように、「コミックで斬る」「スクープで抉る」「不安の時代を明るく読む」というコンセプトのもとに、「銭ゲバ」や「はぐれ雲」のジョージ秋山さん、「月とスッポン」「翔んだカップル」の柳沢きみおさんなど、ビッグな作家連によるコミックの連載や、スポーツ・芸能・ギャンブルを網羅するというのです。芸能があるのなら我が社のプロモーションにも活かせますし、コミックの原作権を取れれば映像化も可能になり、参加する意味もあろうというものです。

 その上、「印刷と流通は毎日新聞にお願いして、出資まで検討してもらっている」、編集長には「GORO」「写楽」を立ち上げ、「週刊ポスト」で100万部を達成して取締役になりながら、92年、58歳の若さで母上の介護のため、小学館を退職されていた「関根進さんにお願いしようと思っている」「まずは首都圏からスタートするけれど、次年度からは関西圏でも発行したい」と聞かされ、「これなら!」ということで中邨社長に話し、7月26日大阪本社へお越しいただくことになりました。そういえば、学生時代に、戦火のベトナム取材等でボーン賞や、日本新聞協会賞を受賞された大森実さんが、毎日新聞を退社されて、日本最初のクオリティペーパーを目指して、1967年に発刊された週刊新聞「東京オブザーバー」もありましたね。憧れはあったものの、卒業時に廃刊になり思いを果たすことはできませんでしたが、どこかで当時への郷愁のようなものがあったのかもしれません。

「ポップティーン」

 

 

「GORO」

 

 

 

 

200万部の超ベストセラーになった「磯野家の謎」

 

 

ジョージ秋山さんの著書「銭ゲバ」「はぐれ雲」

 

 

柳沢きみおさんの著書「月とスッポン」「翔んだカップル」

 

 

国際ジャーナリスト 大森実さん

 

 

「東京オブザーバー」