木村政雄の私的ヒストリー

HISTORY

第話

 ドラマは、吉本興業の社内で西川のりおさんの女性マネージャーが殺され、三枝さん扮する会長が犯人捜しをする中、のりおさんまでもが殺されて、芸能界が大騒ぎになるというものでした。出演者は桂三枝さんの他、斉藤慶子さんや、やすし・きよしさん、巨人・阪神さん、桂文珍さん、西川のりおさん、間寛平さん、たしかダウンタウンの2人も出ていましたね。

 26日にロケを開始したものの、27日の撮影は一旦ストップをして、対策を話し合うことになりました。私は横山さんと再度病院を訪ねた後、横山さんと共に記者会見に臨んで、27日大阪本社へ帰り、上司と打ち合わせた上、夜にプラザホテルで原作者でもある桂三枝さんと会って、シナリオの書き換えを含めて協議を重ねました。

 翌28日午前、病院の医師に電話を入れ、被害者の様子を問い合わせたところ、人工呼吸器は使用しているものの、生命の危機はとりあえず脱したようだとの答えを聞き、その後臨んだABCとの話し合いで「放送は予定通り」、ただし「あまりにも刺激的なタイトルは変更、やすしさんの役はぼんち・おさむさんに変える」ことなどが決まり、29日から撮影を再開することになりました。

 一八君が出演中のTBS・大映テレビ制作ドラマ「疑惑の家族」も12話中の9話で打ち切りとなり、本人も少年院送致に。吉本との契約も解除されました。ところが4カ月後、今度はやすしさんの方が、示談が成立後に会社からの謹慎が解けたこともあって、久しぶりに出たOBCのラジオ番組の後に、淀川区内の交差点でバイクとの接触事故を起こしてしまったのです。体内からアルコールが検出されたこともあって、「息子の件がまだ完全に解決もしていないのに、自ら事故を起こすというのは不謹慎の極みである」として専属契約を解除される羽目に陥ることになってしまったのです。

 事故の報を耳にした時に、さすがの林会長も「もうええ、もうよろし!」と断を下されたとあって、中邨副社長と林専務から呼び出された私にも、やすしさんの契約解除の方針が申し渡されました。「わかりました、ところで、一体誰が本人に通告をするんですか?」と尋ねると、林専務が「そら、お前やろ!」とのこと。「これって、東京事務所開設の時と同じじゃん」と思ったものの、いきさつ上ここは納得する他ありません。

 9日後の4月26日、事前に電話していた通り、奥さんを伴って本社に現れた横山さんを前に、あらかじめ用意された、契約解除通告書を読み上げサインを求めたところ、文字が千々に乱れていたのを憶えています。悄然と去って行かれる夫妻を見送った後、副社長と専務に報告して、記者会見。疲れました。西川さんともお話した後、プレミアム・フライデーでもないのに午後4時ころには会社を出ました。もし、酒が飲めていたら、しこたま飲んでいたと思います。何とも、やるせない一日でしたね。そういえば会長はこの日、滅多にないことに会社をお休みになっていました。可愛がっておられた横山さんが解雇される姿を見たくなかったのでしょうか。

原作となった「吉本興業殺人事件」(著・桂三枝さん)

 

「吉本興業殺人事件」の台本

 

「木村政雄」役を演じられたのは秋野太作さんでした

 

ABCと話し合いしたのちに報道された新聞記事

 

酔ったままの状態で、警察官との現場検証に立ち会うやすしさん

 

ファンに対して、リポーターからコメントを求められるやすしさん

 

契約解除通告書を読み上げました