斎藤ゆう子さんは、その後、「象印ヒントでピント」(ANB)や「連想クイズ」(NHK)の回答者や、「三枝の愛ラブ!爆笑クリニック」(KTV)のパネラー、「プロポーズ大作戦」(ABC)4代目愛のキューピットを務めたり、「マルチスコープ」(NHK)「天才クイズ」(CBC)の司会者として活躍し、多くのCMにも起用されましたが、86年放送作家と結婚したのを機に、芸能界から一旦、身を引くことになりました。大阪での結婚式には私も参加したのですが、あまりに花嫁がお色直しと称して席を離れるのに辟易した記憶があります。
そのあとを埋めるかのように現れたのが、野沢直子さんだったというわけです。たしか83年でした。知人から、野沢那智さんに「一度会ってくれ」と頼まれたのです。野沢那智さんと言えば、白石冬美さんと共にパーソナリティを務める伝説の深夜ラジオ番組「パックインミュージック」(TBS)や、アラン・ドロン、アル・パチーノの吹き替え役としても著名な方です。「そんな人が、どうして一面識もない自分に?」という思いはあったのですが、幾分の好奇心もあって約束したホテルへ出向くことにしました。そこで野沢さんから出たのは、「私の姪が、吉本新喜劇に入りたいと言っているので」という言葉。聞けば、高校在学時にテレビ東京の素人参加番組「ドバドバ大爆弾」に出て、スカウトされて芸能界デビューしたもののうまくいかず、その後に所属した劇団テアトルエコーとも方針が合わずに退団をしたとのこと。彼女が芸能界を目指した責任の一端は自分にもあると思い、何とか「吉本さんに入れてもらえたら・・」ということでした。
打ち明けられた私としては、「なんで東京育ちの子が大阪の、それも新喜劇に?」という意外な思いと、自らも劇団を主宰されている野沢さんにとっては、言わずもがなのことではあるのですが、劇団という組織の持つ、特有のヒエラルキーに耐えるよりも、「もっとのびのびした環境のほうが彼女にとってはいいんじゃないですかね」と返事をし、日を改めて本人と会うことにしました。
現れた本人は、ひょうきんな女の子で、お父さんが会社を経営されているとかで、ギャラを払わなくても良さそうなので、「まあ、その辺に転がってれば?」くらいの軽い気持ちで、所属タレントということにしてしまいました。事務所に屯していた「ぼんち・ファンクラブ」の女の子たちとも、年齢が近かったこともあって、仲良くワイワイ騒いでいましたね。そんなある日、事務所の皆で白樺湖へ遊びに行った帰り、「そうだ!ここに別荘があるのを忘れてた」と言って,驚いたのを憶えています。聞くと、お父さんが結構浮き沈みの激しい人生を歩まれた人で、成功された今になっても、自分の家がまだ「貧乏なまま」だと思い込んでいたそうです。「お金持ちにまだ慣れていなくって!とポリポリ頭を掻いていたのが可愛かったですね。
事務所の皆と白樺湖へ 一緒に旅行をした野沢直子さん。
ぼんち・ファンクラブの女の子たち
野沢さんは人気ラジオ番組のパーソナリティを務めていらっしゃいました。